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澤 芳樹

大阪大学大学院医学系研究科

​外科学講座心臓血管外科学 教授

近年の急速な医療の進歩にかかわらず、世界的にも重症心不全に対する治療体系は、心臓移植や人工心臓治療が中心で根本的な治療は未だ確立されていないといっても過言ではありません。

我が国における臓器移植は、世界から30年以上遅れて始まった中で、世界に追随すべく、心臓移植、補助人工心臓の発展と普及、心筋再生医療の実用化にむけて種々の研究及び臨床を推進し、あらゆる重症心不全患者に応じた普遍的な治療法を確立する努力を行ってきました。

大阪大学では、1997年の脳死臓器移植法案の制定後、脳死心臓移植第一例目を1999年2月に、そして肺移植を2000年に実施以降、症例数の増加を図るべくあらゆる努力を払う中、ようやく2011年7月の脳死法案が改定されました。以後、症例数は年間50~80例前後と増加しつつありますが、未だ解消し得ないドナー不足に対して引き続き社会的活動が重要と考えます。

そして、何より心臓移植が必要な患者さんとそのご家族の支援が大変重要と認識してまいりました。

一方、補助人工心臓(LVAD)は、とくに近年の小型された植込型LVADの各機種による治療実績の向上が著しく、心臓移植の普及が未だ難しい中、LVADが重症心不全治療の中心的役割を果たしつつあります。さらに、大阪大学では2008年に本邦初の永久使用目的人工心臓治療(DT)の高齢者LVASを行い、DT治療の治験も終了しておりますので、これから保険診療が開始される段階で、ますます、補助人工心臓の役割も大きくなります。

最近、大阪大学では、世界最初の心筋再生治療法である、自己骨格筋芽細胞シート移植を開発し、実用化の段階に入っており、さらに、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療の世界第一例目も、無事終了しております。

このように重症心不全や呼吸器不全患者さんに対して、植込型補助人工心臓や心臓移植・胚移植はもとより再生治療法の展開が期待される中で、重要なのは、重症臓器不全の患者さんとその家族をいかに支援するかということであります。

当財団はその名の通り、重症心不全や呼吸不全で苦しむ患者さんが大阪大学や国立循環器病研究センターで長期にわたって治療を受ける際の、両病院周辺での長期滞在の患者さんを心温かくボランティア活動的に支援する目的で、設置されたものです。

そのきっかけとは、吹田市の篤志家の方が、先祖伝来の土地をこの活動のために寄贈してくださったのが始まりで、その輪を広げ活動しようと私ども大阪大学関係や国立循環器研究センターの医師の有志を中心に当財団が設立され、ケアーハウス等の支援センターを運営していくことになったわけであります。

 

欧米では、チャリティーやドネーションなどが盛んな中、日本は、その制度、体制が十分ではないが、当財団の活動がそのきっかけとなって、志の高い人たちのやさしさが、重症な患者さんの支援体制のきっかけとなって、

その輪が一層広がることを祈念しております。

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